サヨナラのために
「わあ…」
海に着いた頃には、辺りはだんだんと明るくなっていた。
濃い波の向こう、水平線の狭間に、朝日が顔を出す。
「綺麗だね」
誠也の口から漏れた言葉に、私はうなずく。
本当に、嘘みたいに綺麗。
「ね、ちょっと座らない?」
誠也を促して、砂浜に腰を下ろす。
ザザザ、と耳の奥にまで届く波の音を聞きながら、私たちはしばらくの間無言で海を見つめていた。
「最高だな」
先に沈黙を破ったのは誠也だった。
「ありがとう、美羽。最高の誕生日」
ニッと無邪気に笑う誠也に、胸が押し潰される。
笑ってそうだね、って言って、抱きしめたい。
「来年からもこよ」
約束だよって、その言葉に頷いてしまいたい。
「もう、こない」
でも、そんなことは、許されない。