サヨナラのために
「もう、誠也とは行かない」
目を見て、はっきりと、私はそう言う。
「え…?」
力の抜けた誠也の手から、スルリと自分の手を引き抜く。
「海だけじゃなくて、どこにも。誠也とは、もうどこにも行かないよ」
「美羽?」
「私たち」
冷たい海の風が、頬を撫で、髪を揺らす。
「幼なじみ、やめよう」
本当は、あの時にいうはずだった言葉。
幼なじみじゃなくて、恋人になろう。
続きは、もう、口にすることはできない。
「ごめんね、私から始めといて。でも、こんな関係おかしい。誠也も、気付いてたでしょ?」
誠也は、何も言わない。