サヨナラのために


「美羽、あんた痩せすぎ。もっと食べなさい」


「ん、ごめん」


夕食中、お母さんの指摘に私は曖昧に笑う。


「そうだ、今年のクリスマスはどうするの」


「んー、特に。家にいるよ」


「そう?去年から急にせいちゃんとパーティーしなくなって…」


「あー、うん。誠也、彼女できたから」


「あら、そうだったの!?」


「うん、だからあんまり一緒にいるのはやめようと思って」


スラスラと動く口に、嘘が上手くなったことを自覚する。


誠也に彼女がいるかなんて、もう私には知りようがない。


佐々木さんとも、あれから話していない。


もうきっと、話すこともない。


もうすぐ三年になる。


大学に行って、働いて。


そんな自分が、想像できない。


未来が、なにも見えない。


いっそ、遠くに行こうか。


遠くに行ってしまったら、楽になれるのかな。

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