サヨナラのために



年が明けて、3月になった。


誠也と離れてから、半年が経とうとしている。


あれほど辛かった心も、大分慣れた。


まだ姿を見かけると、苦しくなるけれど。


でもきっと、そんな感情もそのうち消えていって、いつか過去になるんだろうって、そんな気がしている。


それに、ホッとしている自分もいる。


辛いことに慣れて分厚い壁で覆われた心は、完全に鈍くなっていた。


誰かに心を動かされることなんて、一生無いと確信するほどに。


孝宏先輩は地元の専門学校に美容師になるために通うらしい。


いよいよ、私たちの番が回ってくる。

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