サヨナラのために
「幼なじみだって理由つけて逃げてるのは、自分でしょ?気持ちが否定されるのが、怖いだけのくせに」
そうだよ。
私は、怖かった。
関係ないって誠也が言うのを聞いたあの日から、ずっと怖くて。
本当のことなんて何も言えなかったし、一つも聞けなかった。
全部私が勝手に考えて、決めつけて。
向き合うのを、拒んだ。
「じゃあ、どうしたらよかったの…」
頬がジンジンと痛む。
掴まれていた襟元が解放されて、佐々木さんは流れた涙を拭った。
「…体育館裏の壁」
「え?」
「私、バカなあなたたちにはもう付き合い切れないんで」
佐々木さんは堂々とそう言って、背を向けて行ってしまった。