サヨナラのために


はやる気持ちが、自然と私の足を動かした。


最初は歩いて、でもそれが早歩きになって、最後は全力で走っていた。


まるで、今初めて動き出したかのように心臓の鼓動が鮮明に感じられる。


「孝宏先輩!」


躊躇なく3年の教室に踏み込む。


「美羽ちゃん!?」


驚く先輩に、私は駆け寄る。


「あの、卒業、おめでとうございます。…わ、たし…行っても、いいですか?」


突然こんなこと言って、困るよね。


わけ、わかんないよね。


「…うん、行っておいで」


ポン、と優しい感覚が頭におりる。


誠也、私ね。


あなたと出会った日から。友達に、裏切られた日から。


あなた以外に大切な人なんて要らないって思ってた。


でも、できたよ。


無条件で、私の味方をしてくれる、大切な友達が。


「ありがとう先輩、大好き!」


叫んで、私は教室を飛び出す。


走って、走って、体育館裏に来た。

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