サヨナラのために



ふっと、鼻先を優しい香りが掠めた。


もう何年も動かされることのなかった心臓が、ドクリと音を立てる。


すぐに振り返る。


遠ざかる背中。



確証なんて、ない。



でも。



「ごめん、お昼先食べてて」


「え、先輩!?」


私は迷うことなく走り出した。



ああ、こんなにも全力になるなんて。



やっぱり、わたしには。


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