サヨナラのために


「ただいま」


「おかえりー、あんたちょっとこれ持ってって」


帰るなり渡された、お皿に盛り付けられてラップをされた肉じゃが。


「となり?」


「そう、今日せいちゃん一人なんだって。一緒に食べてきなさいよ」


「おかずこれだけ?」


「あとは適当にあんたがつくんなさい」


それくらいできるよね?、と言わんばかりの目に言い返す言葉もなく。


私はカバンを置いて、家を出る。


歩いて30秒の距離。


小学校の頃から、変わらない。


玄関の横の三番目の植木鉢を持ち上げると、そこにはちゃんと鍵があった。

< 18 / 153 >

この作品をシェア

pagetop