サヨナラのために
先生に日直の仕事を頼まれて、帰りが遅くなってた。
テスト期間だったのか、校舎には人気がなくて、私はなんとなく早足で廊下を歩いてて。
声が聞こえたのは、その時。
「誠也くんのこと好きなの。私と、付き合って」
思わず足を止めた。
慌てて身を隠して、でも一瞬だけ見えた、告白しているその人は3年生の先輩で、すごく、すごく美人な人で。
「…先輩、考える時間、もらえますか」
誠也の声が、なんだか別人のように思えて怖くなった。
「それは、幼馴染のあの子がいるから?」
ドクン、と心臓が嫌な音を立てる。
どこかで、思ってた。
私たちはお互いが特別で、大切で。きっとそれはこれからも変わらなくて。
でも。
「…美羽は、関係ありません」
でも、きっとそれは結局そこまででしかない。
誠也にとって、私はきっと他のことは違う。
それは、他の子のようにはなれないということ。
誠也の隣に並ぶことはできても、それは、幼馴染以上には、なれないということ。
私は、息を殺して、バレないように、その場を立ち去った。
あの時、色々な感情がごちゃまぜになっていたはずなのに、私はひどく冷静で。
頭にあったのは1つだけ。
こんな関係、捨てればいい。