サヨナラのために


痛くて、辛くて。それなのに喜んでしまう本能が憎たらしくて。


私の名前を何度も呼ぶ誠也の顔が、苦しそうで。





「…ごめん」



最後に耳元で囁かれた声が、妙に、胸に来た。


その夜、私は誠也の隣で泣いた。


絶対に気づかれないように、口を押さえて、声を殺して。


そして気づいた。







私たちは、もうどこにもいけない。


これからの未来には、サヨナラしか待っていないんだって。

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