サヨナラのために
「ちょっと、佐々木さんのこと送ってた」
「…そっか」
自分の口から出た声は、予想以上に冷たかった。
「そう、今日さ、マネージャーが入るって紹介されたらまさかの佐々木さんでさ!それで…」
私は誠也の腕を引っ張って首に思い切り抱きつく。
「…美羽?本当にどうした、今日」
私は首を横に振る。
なんて言えばいいんだろう、でも…
聞きたくない。
そんな、子供じみた感情。
「誠也も、ぎゅってして」
私はさらにきつく誠也を抱きしめる。
「…ぎゅうだけ?」
視界が、反転する。
天井と、誠也の真剣な顔。
胸がきゅう、と締め付けられる。
私はまた首を横に振った。
「…ぜんぶ」
私の言葉と同時に、誠也の指が私の腰を撫でた。