サヨナラのために
誠也の触り方はずるい。
恥ずかしくて、もどかしくて、知らない声が出る。
「も、う、やだ…」
「なんで?」
あと、誠也は少しだけ優しくなくなる。
顔が近づいてきて、私は思わず逸らす。
「…キスはだめ」
「分かってる」
うつ伏せにされて、ゆっくりと背中にキスが落ちてくる。
「…やっ」
1つになる感覚にも、もう慣れてしまった。
「…っ、なんか、今日すごい」
「な、にそれ、しらないっ…ばか」
思考がうまくできなくなるから、こうしてるときだけ忘れることができる。
いろんな感情も、葛藤も、嫉妬も。
愛されてるという錯覚に浸ることができる。
偽りの幸せだって、いい。