サヨナラのために


ちらりと時計を見ると、8時半を過ぎたところだった。


「…美羽、ご飯たべよ」


さわやかな笑顔でそう告げる誠也に、私は重い体を持ち上げる。


「…誠也が変態だって学校で言いふらそうかな」


「いいよ」


さわやかな笑顔のままそう言う誠也。


私は、誠也を焦らせることもできない。


誠也にとって、私はやっぱりいつまでも「手のかかる幼馴染」で。


駄々をこねる私を、優しく、あやす。


だから、絶対に動じない。


動じてなんて、くれない。


だから誠也は私の頼みを断れないし、私は誠也のまっすぐな目に見つめられると言い返せない。

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