サヨナラのために


「みうちゃん、だよね?」


呼ばれた自分の名前に、やっとのことで私は顔を上げた。


同い年くらいの、知らない、男の子。


「僕、今日からみうちゃんのおとなりさんになるんだよ!せいやっていうんだ」


「せいや、くん?」


「うん」


あなたはにっこり笑って、手を差し伸べてくれた。


「今日からずっと一緒だよ!」


そっとあなたの小さな、暖かい手に触れて、気づけば私の両目からは大粒の涙が溢れていた。


いろんな感情がごちゃまぜになって。


でも、多分。









あの時、私はあなたのことが好きになったんだ。



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