サヨナラのために
「美羽、せいちゃん来たわよ!」
「…はーい」
これで何回連続?
カバンを肩にかけ、階段を下りる。
「あんた、たまには早起きしてせいちゃん迎えに行ってあげなさいよ。喜ぶわよ?」
太陽みたいな笑顔でなんで!?、と質問責めにしてくる誠也の顔が簡単に想像できる。
「…行ってきます」
家を出ると、誠也は門の前で律儀に立って待っていた。
「おはよ、美羽」
「…おはよ」
誠也の人懐っこい笑顔を見ると、思わず抱きしめたくなる。
「朝、一緒に行かないって言ったじゃん」
私は誤魔化すように早足で誠也の前を歩く。
「でも、一緒に行ってくれるじゃん」
誠也は私の横に並んで、トン、と体を当ててくる。
「迷惑?」
「…そんなことない、けど」
迷惑だって言って、切り捨てちゃえばいいって何度も思ったのに。
結局私はこの関係を壊したいと思いながらも、どこかで心地よく思ってしまっていて。
このままで、いいんじゃないかなんて、甘えそうになる。
「あ、今週末さ、練習試合あるんだ」
「そうなの?頑張ってね」