サヨナラのために
「美羽!」
声に、肩が震える。
まさか、呼ばれるなんて思ってなかったから。
髪の毛から汗をポタポタ垂らしながら誠也は一直線に私の元に走ってきた。
周りの女の子たちも、あっけにとられてぽかんとしている。
「ちょ、そんな走んなくたって…」
「はあっ…ばか、じゃなきゃ逃げるだろ」
それは、そうだけど…
ゴツゴツした手に手首を掴まれ、心臓が跳ねる。
「今日は、ダメ。行かせない」
「っ…場所変えよ!」
私は誠也に腕を掴まれたまま急いでその場から逃げる。
「美羽、こっち」
体が後ろにクン、と引っ張られて、あっという間に誠也に主導権を握られた。
「ここなら、誰もこない」