サヨナラのために
「美羽」
腕を掴まれて、タオルがするりと落ちる。
真剣な瞳に捕らえられて、ハッとする。
「子供扱いしないで」
そのままグッと押されて、視界が反転する。
「俺のこと、弟みたいだって思ってる?」
顔が、首元に埋まる。唇が首筋に触れて、熱い息がかかる。
「ちょっ…ん」
「こんなこと、してるのに?」
耳元で囁かれた低い声に、体がゾクゾクする。
「美羽」
「…っダメ!!!」
私はなんとか力を振り絞って、誠也の胸を押し返す。
「ばか、ここ外でしょ!!誰かに見られたら…」
「ふーん、じゃあ家だったらいいんだ?」
「なっ…」
「美羽の変態」
余裕そうに笑って、誠也はそう言う。
「ばか!知らない!私もう帰るから!」
私はもつれそうになる足で、誠也の元から逃げる。
…ばか。
余裕なのは、誠也だけだよ。
私のこと子供扱いしてるのは、誠也じゃん。