サヨナラのために
「な…別に神野さんに関係…」
階下が騒がしくなって、体操服姿の2年生が階段を上ってきた。
その集団は、ちょうど体育を終えた誠也のクラスだった。
それに気がついたのか、佐々木さんを取り囲んでいた彼女たちは「行こう」と口々に言って去ってしまった。
「あ、の…神野せんぱ」
「あなたも」
佐々木さんの声に、冷たい声をかぶせる。
「泣くなら1人で泣いたら?迷惑」
ショックを受けた顔をした佐々木さんを置いて私は移動先の教室に向かって階段を上る。
「うわ、キッツ」「神野さん、やっぱ怖いよね」「一年の子、かわいそう…」「あの子別に悪くないよね?」
野次馬の声が耳に入ってきて、私はそっと息を吐く。
今更になって足が震える。
こんなこと、するつもりはなかったんだけどな。