サヨナラのために
「っ、ねえ、誠也!」
何度も呼んでるのに、ちっとも振り向いてくれない。止まってくれない。
「体調なんて、悪くないから…」
ものすごく、怒ってる。
聞かれた?
私、佐々木さんに酷いこと言った。
…私のこと、軽蔑した?
誠也は保健室までくると、ドアを無言で開けた。
中には先生も生徒もいなかった。誠也は知ってて、ここを選んだのかもしれない。
「…座って」
言われるがままに椅子に座って、向かい合わせで誠也も座る。
「…怒ってる?」
「怒ってる」
間髪入れずそう返した誠也に、心臓がギュッと萎縮した。
呆れられた。…ううん、きっと、嫌われた。
真っ黒な私を、見られた。
「どうして、強がって、無茶すんだよ」