サヨナラのために


「神野さんがいいと思いまーす」


わざとらしい声に、体が凍る。


しん、と静まり返った教室。


高校最後の文化祭。誰もが浮き足立って、最高のものにするために必死になる。


どのクラスの出し物が一番人気があったか競い合うのも、文化祭の醍醐味になっている。


お客さんを多く集めるために重要な役割をする看板。


大目玉だけど、それだけのプレッシャーがある分、そんなにやりたがる人は多くない。


「神野さん、絵描けるよね?」「けっこううまいよね、みたことあるー」


思ってもないくせに。

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