サヨナラのために
「絵具と筆は買ったから、あとはスパンコールと…」
「美羽、もつよ」
「あ、ありがと」
ひょいと荷物をさらわれ、私は軽くなった体でもう一度メモに目を通す。
「みて、あの人かっこいい…」
チラリと目線だけ上げると、女の子2人組が誠也を見つめて話している。
さすがモテ男。
なんとなく居心地が悪くなって、誠也と少しだけ距離を開ける。
「なんで、逃げようとすんの」
すぐにバレて、腕を掴まれた。
「いや、なんか、目立つから…」
「ダメ。美羽がナンパされたら困る」
「なっ…ばかなの!?」
どうしてこの男は自分のカッコよさに気が付かないんだろう。