サヨナラのために


…当たってる、けど。


「…違います、私はこれが食べたい」


そう言って隣のチョコレートのアイスを指さした。


「えっ嘘だ!絶対嘘!」


必死になってそう言い張る誠也が、なんだか面白くて。



…かわいくて。


「ふっ…本当だもん」


ずっと、こんな風にいれたらいいのに。


そんな夢を、抱きそうになる。


店員さんに注文して、お店の前のベンチに座った。


「誠也は何にしたの?」


「俺は、これ」


誠也の手にあったのは、私が食べたかったさくらんぼのアイス。


「なんで…」


「んー?俺が食べたかったから。美羽もいるでしょ?」


…ほんと、誠也はばかだな。

< 61 / 153 >

この作品をシェア

pagetop