サヨナラのために
“看板を手伝ってくれる人は、今日の放課後残ってください”
黒板の隅に書かれたメッセージは、きっと何人かの目には入ったはずだったけれど、予想通り教室に残ったのは私だけだった。
それぞれ部活とか委員会の方でも役割があって忙しいだろうし、私に看板の仕事をやらせた「誠也ファン」のグループに逆らうなんて、普通だったらしない。
「ま、1人の方が楽だけど」
私は制服の袖をまくって絵具を取り出し、作業に取り掛かる。
スカートのポケットに入っている携帯が短く振動して、メッセージの受信を告げた。