サヨナラのために
どれくらい集中して作業していただろう。
静まり返っていた廊下に、突如バタバタと足音が響き、教室のドアが音を立てて開いた。
突然のことに驚いて顔を上げると、そこには背の高い知らない男子生徒が立っていた。
彼も私に気付いて、にっこりと優しく微笑む。
「ごめん、驚かせた?」
「…はあ、まあ」
「ちょっとかくまってくれる?」
一方的にそう言うと、私の返事も待たずに教卓の中に入ってしまった。
その身長でよく入ったな、と思うのと同時にパタパタと足音が聞こえてまた知らない女子生徒2人が入ってくる。
「ねえ、タカヒロ見なかった?」
「…タカヒロ?」
「知らない?背が高くてかっこいい、この学校じゃ有名でしょ!」
よく分からないけど多分さっきの人のことだろう。
「そんな感じの人ならさっきあっちの方に走って行きましたよ。多分一階におりました」
「ありがとう、助かった!」
そう言いながら彼女たちはまた走って出て行ってしまった。