サヨナラのために


「先に自分が名乗ったらどうですか?あと近いです!」


私はしっかり彼を睨みつけて、作業を続ける。無駄にできる時間なんてない。


「俺は斎藤孝宏。3年。本当に知らない?」


「ごめんなさい、初耳です」


「ええ!ショックだな〜俺は君のこと知ってるのに」


先輩の言葉に私は首を傾げる。


「名前聞いてましたよね?」


「うん、名前は知らない。でもこの前、階段での騒動見てたから」


先輩の言葉に、私は何も言えなくなってしまう。


「ウチのクラスにも誠也くんファンいっぱいいるからさ。それにしてもかっこよかったよ、で、名前は?」


「…神野美羽です」


なんだか一気に流れを持っていかれてしまった。

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