サヨナラのために


「美羽ちゃんかあ〜かわいいね」


私は先輩の言葉を無視して黙々と絵具を塗る。


「誠也くんと幼なじみなんだってね」


「そうですけど」


「本当にただの幼なじみ?」


私はピタリと手を止め、先輩を強く睨みつける。


「さっきから何が言いたいんですか?」


「別に〜?ただ、後悔して欲しくないなって」


そう言うと孝宏先輩は置いてあった青の絵具を手に取って、空の部分に色を塗り始めた。


「2人でやった方が効率いいでしょ?」


私は言い返そうと開いていた口を閉じる。


この人の食えない笑顔に、なんとなく気が抜けてしまう。


その人懐っこさで、スルリと人の心に入ってくる。見た目ではわからない鋭さで相手の心を読むくせに、自分は全く出さない。


少しだけ、誠也に似ている気がした。




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