サヨナラのために
先輩の他愛もない話を聞いたり聞かなかったりして作業をしているうちに、いつのまにか外は暗くなっていた。
下校時間のチャイムが鳴り、私は伸びをする。
「先輩、もう終わりにしましょ」
「あれ、今の俺の話聞いてた?」
「…みかん?」
「うわあ、全然違う」
先輩の空気感に、思わず笑みがこぼれる。
「ありがとうございました、手伝ってもらっちゃって」
「俺は可愛い子と2人きりで嬉しかったけどね?」
「あ、絵具あっちに置いてください」
この数時間でこの人のあしらい方もかなり分かってしまった。