サヨナラのために


外に出ると、少しだけ空が暗くなっていた。


家まで送るという先輩の申し出を断っても無駄だとうっすらわかっていたので、素直に受け取ることにした。


「美羽ちゃんは今までにないタイプだよ、好きになりそう」


「タイプで言ったら先輩の方がレアキャラだと思いますよ?」


少しうざったい所もあるけれど、不思議と相手に気を遣わせない。


先輩は多分私が思うよりもずっと大人で、遠い。


「もうすぐそこなので大丈夫です」


「また明日も行くね」


嘘か本当かわからない言葉をサラリと言って、先輩は手を振って行ってしまった。


遠ざかる背中をぼんやり見つめて思う。


先輩の「後悔して欲しくない」の言葉には、意味があったのかもしれない。


先輩は、何かを失って、後悔したんですか?

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