サヨナラのために


「美羽ちゃんさ、俺と付き合いなよ」


私は手を止めて、先輩の顔を見つめる。


出会って数日の相手に言うことではないし、いつも通り先輩の表情は読めない。


「…先輩、私と結婚してくれますか?」


「え?」


「これから先ずっと、私と一緒にいてくれるんですか?」


珍しくポカンとしている先輩を見て、私はまた作業を始める。


「私、結婚してくれる人としか付き合う気ないので」


「まさか、美羽ちゃん付き合ったことない?」


「はい」


先輩は意外だったらしく、目を大きく開いて私を見つめた。


「すごいなあ美羽ちゃんは、一緒にいて飽きない」


「嫌味ですか?」

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