サヨナラのために
「じゃあ、結婚してくれって言ったら付き合うの?」
「いいえ」
即答した私に、先輩は再び間抜けな表情になる。
「どういうこと?」
「もし付き合ったとして、きっとその人はいつか私から離れちゃうんです。私は、絶対にその人を私の一番にしてあげられないから。そんなのって、耐えられないですよ」
これから先何年経っても、どんなに素敵で、私を愛してくれる人に出会っても。
それでも私は同じだけ愛を返すことができない。
私の一番は、どうしたって、誠也なんだ。
「じゃあ、美羽ちゃんはずっと独りでいるつもりなの?」
先輩の目は、真っ直ぐで、心の中を、見透かされている気がした。