銀の姫はその双肩に運命をのせて
その夜から、ディアナは久々に城の部屋で眠ることになった。
あたたかく、やわらかいベッド。朝まで起きることはないだろう。夜明け前の厩舎での目覚めもなかなか新鮮で、刺激に満ちていたが、慣れない生活環境だったのでさすがに寝不足だった。
侍女のアネットにいったん帰国することを伝えると、狂喜乱舞した。
「でも。嫁ぐために出て行ったのにいきなり出戻ったのかと、あきれられてしまうかも」
アネットの浮かれように、ディアナは釘を差した。
「いいえ、いいえ! 立派な凱旋帰国ですわ。天馬を出現させた姫さまの評判も、上がること間違いなし! それに、あまり大きな声では言えませんが、ルフォンとの共同開拓となれば銀の国の財政も、潤うはずです」
「そうね。そこなのよね」
好都合なのは、グリフィンのお披露目だけはない。銀の国にとっても願ってもないチャンス。王太子との婚礼のいざこざはあったが、それ以上の見返りが期待できる。
第二王子のグリフィンを、父と母が気に入ってくれたら銀の国でそのまま結婚へ……ということも、あるかもしれない。できれば、そうなりたい。
想像しただけで、ぼうっと頬が熱くなった。手のひらでおさえる。ますます熱くなる。
「でも、グリフィンさまは厩舎で寝起きするような、変人王子ですからねえ」
ディアナの心を見透かしたように、アネットがつぶやいた。
「ええっ?」
「この国の全権大使なのでしょう、グリフィンさまが。うまく世渡りできるかしら。銀の国でも『褥は厩舎の藁がいい。夜伽には姫を所望する』なんておっしゃられたら、王さまもさぞかし驚かれるでしょうね」
「さすがに、そこまではしないと思うけど……銀の国では」
「だとよろしいのですが」
絶対にしない、とは言い切れない。けれど、銀の国の馬を見たがるだろう。間違いなく。ディアナは苦笑でごまかした。
「詳しくは明日。まずは、国に手紙を書かなきゃね」
「ええ、お休みなさいませ。ごゆっくりと、姫さま」
ふかふかの寝台は、ディアナを深い眠りへと誘った。
あたたかく、やわらかいベッド。朝まで起きることはないだろう。夜明け前の厩舎での目覚めもなかなか新鮮で、刺激に満ちていたが、慣れない生活環境だったのでさすがに寝不足だった。
侍女のアネットにいったん帰国することを伝えると、狂喜乱舞した。
「でも。嫁ぐために出て行ったのにいきなり出戻ったのかと、あきれられてしまうかも」
アネットの浮かれように、ディアナは釘を差した。
「いいえ、いいえ! 立派な凱旋帰国ですわ。天馬を出現させた姫さまの評判も、上がること間違いなし! それに、あまり大きな声では言えませんが、ルフォンとの共同開拓となれば銀の国の財政も、潤うはずです」
「そうね。そこなのよね」
好都合なのは、グリフィンのお披露目だけはない。銀の国にとっても願ってもないチャンス。王太子との婚礼のいざこざはあったが、それ以上の見返りが期待できる。
第二王子のグリフィンを、父と母が気に入ってくれたら銀の国でそのまま結婚へ……ということも、あるかもしれない。できれば、そうなりたい。
想像しただけで、ぼうっと頬が熱くなった。手のひらでおさえる。ますます熱くなる。
「でも、グリフィンさまは厩舎で寝起きするような、変人王子ですからねえ」
ディアナの心を見透かしたように、アネットがつぶやいた。
「ええっ?」
「この国の全権大使なのでしょう、グリフィンさまが。うまく世渡りできるかしら。銀の国でも『褥は厩舎の藁がいい。夜伽には姫を所望する』なんておっしゃられたら、王さまもさぞかし驚かれるでしょうね」
「さすがに、そこまではしないと思うけど……銀の国では」
「だとよろしいのですが」
絶対にしない、とは言い切れない。けれど、銀の国の馬を見たがるだろう。間違いなく。ディアナは苦笑でごまかした。
「詳しくは明日。まずは、国に手紙を書かなきゃね」
「ええ、お休みなさいませ。ごゆっくりと、姫さま」
ふかふかの寝台は、ディアナを深い眠りへと誘った。