幼い私は…美人な姉の彼氏の友達の友達に恋をした
21、はじめて
要からの愛の告白に、びっくりだ。
正気の状態で真面目にまさかこう「愛してる」などというタイプには思えなく。それが、聖人を地に落とすほどの威力ある微笑みつきなら尚更だ。
「なんだ、驚いた顔して」
「要さんっぽくないです」
「…俺っぽいとは?」
要は質問しながら、陸の身体の柔らかさを堪能する。
数多くはないが、女を知らない訳ではない要。今までと違いすぎて扱いが分からなくなる。
(柔らかさが、感度が、素晴らしくて、脳髄にダイレクトに響くな…)
要は意識を強く持ちながら、身体を触る行為が単調にならないようにと、優しく弾く。
「なんかっ…俺についてこいってタイプかな?って。
……で、俺がやりたい時に、やれないなら終わり。
二度はなくて、さよなら。女の人からは沢山愛の言葉を貰うけど、絶対に要さんからは言わない。基本的に女には興味なく、来るもの拒まず去る者追わず、そうか。で関係は終わりそうだなぁと、思っていました」
陸の感想、最初の方は前戯をしながら聞いていたが、現在手は止まっている。
「おい、その想像撤回しろ。俺は一途だ。女を取っ替え引っ替えしている下がゆるゆるな奴らと一緒にするな」
「イメージですよ、イメージ。だって実際に要さんは、モテるじゃないですか?」
「万人にモテようが、陸にモテなければ何の意味もない」
キュるん、キュるん、キュるん。要の告白に胸が嬉しくて痛い。感動から涙が出てくる。
「…要さんが、泣かす〜」
溢れる涙が溢れ落ちる前に、ねっとりと熱い舌が目尻を這う。
感動で高鳴る鼓動が、じわじわと身体に〝性〟を呼び起こしていく。
「ぁぁ…泣いている顔もいいな」
「…変態みたいですよ」
真っ赤な顔で抗議する陸に、要は意識して顔をつくる。
「変態であることは否定しないが、俺の場合は陸に対してだけだ。それでもいけないか?」
ズキューーーーーッーーーン!!!
「はぅっ!!!!!」
殺人級の甘いセリフは、見事に陸の胸を撃ち抜いた。動悸息切れが止まらない。
はぁ、はぁ、はぁ、言っている陸を見て要はこの上なく満足していた。
要のこの見目が好みであるなら、それは存分に使わないと勿体ない。
(くそっ、陸が俺の見目を好みなら、もっと早い段階で身体をならしていけたのにな…)
優一が彼氏ではないとすると、十中八九、陸は処女だ。いきなり気持ちよくなるのは無理だろう。
最初は苦痛だけ。きっと陸は耐えて頑張ってくれるが、快感には至らないだろう。
挿入での快楽を感じてもらうのは、諦めている。それは追い追い要が時間をかけて、陸の身体をならしていけばいい。
だからこそ攻め落とすには、精神的な部分が大きな鍵となる。陸が好きなのは要だったと本人から言質をとれば、気は限りなくでかくなるものだ。
己に見惚れている陸へ色っぽい微笑みを見せながら、ゆっくりと唇を舐める。口づけより卑猥さが増し、陸の顔はどんどんと恍惚としていく。
「ぅ…………ンっ……」
唇に吸い付き離れ、また吸い付く。日常的ではありえない刺激に陸の唇がぷくっと腫れ上がる。
「いい具合だな」
「やだぁ…もっと…」
離れていく唇を残念に思っていた陸だが、神業で体勢を変えられ身体は横向きにさせられる。陸の視界は殺風景な室内になり、要が見えなくなる。
「かな…め……さん?」
密着していた要の身体が離れてしまい、途端に寂しくなってしまう。
「おいっ。そんな声を出すな、イキそうになるだろ」
どろっどろに甘い要の声が背後から聞こえ、寂しさは紛れるが、それでも不服だ。
文句を言ってやろうと口を開けば、後ろから抱きしめられる。
「うひゃっ!!」
「ンッ……っ…あまり動かないでくれ。大事なところに擦れるからな」
「はうっ…」
突如与えられた濃厚な抱擁と、生々しい要の下半身状況を実況された陸の身体は、また跳ね上がる。
「…だから動くな」
「無理ですよ…要さんの声が良過ぎて、反応するなっていうのが無理ですぅ」
陸の心からの懇願に無言の要。しかし身体は悩殺されたのか? 後ろからぎゅうぎゅうに抱きしめてくる。
「大事なところ、めちゃくちゃ当たってますけど」とは言えず、その状態はしばし続く。
二人の肉体には一切の隙間がない。
要は想いが繋がり感動しているが、陸は身体に密着している〝あれ〟が気になって仕方ない。
動かないでいるのは無理。未知なる物体を確かめたくて、うずうずしてしまう。
次の行動へ移さない要に我慢出来なく、ひとしきり自問自答した後、陸は要の名を呼んでみる。
「か…なめ…さん…?」
返答はない。
筋肉の筋が浮かび上がり、陸の倍はあろう腕が身体に巻きついている。何故か要の筋肉質な身体は硬く張っていた。
「あの…ごめんなさい…。だっていきなり要さんが、後ろからギュッてするから…」
「………もう…幸せ過ぎて、死にそうだ」
ぎょっ!? 目が飛び出しそうになる。死ぬだなんて大袈裟過ぎるだろう。
これはただのセックスだ。むしろ陸は初めてだから少しは特別感があるが、久しぶりとは言っても要には珍しくなく日常的行為なはず。要の言葉に疑問満載の陸に、要は切実な願いをしてくる。
「なぁ…陸…」
ビクッ!!! 要の色気に屈した身体は、陸のものであって陸ではなくなる。
頭を上下に動かすだけで精一杯。もう言葉さえも普通に紡げない。
「これ以上、好きになったら身がもたないから。あまり可愛い事を言わないで欲しい」
「これ以上ってなんですか!? もっと好きになってくださいよーー」
ぷりぷりと、爆乳胸を揺らしながら怒る陸に、要は撃沈中。
「…陸…頼む、やめてくれ。本気でこれ以上愛し過ぎたら、俺の身がもたない。
…現在だって犯罪スレスレなのに、俺を犯罪者にする気か?」
うずくまる要のサラサラの髪の毛を、うっとり見ながら陸は喜び叫びたい衝動と戦っていた。
「私は未成年じゃないですよ? それに九年間、無謀にも、ずーっと要さん一筋だったんです。
もっともっと好きになってくださいっ。他の女の人が見えないくらい好きになってください」
蹲りながら唸っている要の頭を、ゆっくりと撫でる陸。
「髪の毛サラサラですね…癒されますぅ」
「分かった」
急に起き上がった要の顔は、真っ赤だ。昨日から全てが衝撃的過ぎて本気で妄想の中か、白昼夢でも見てるのでは?と思ってしまう。
「要さん?」
「今日、連絡を取って。明日朝一に陸の両親へ挨拶に行く。婚姻届も全て記入してな」
「へ? えっーーーーー!?」
「陸がそう言うなら、縛らせてもらう。
一刻も早く籍を入れて、俺の姓を名乗ってもらう。大学は普通に通えばいいし、就職して働きたいなら好きにしたらいいが、俺と結婚している事を隠すのは絶対に許さない。
姓の変更は直ぐにしてもらう。それでも陸は俺を好きだと思うか??」
投げやりな言葉には、要の必死さが滲み出ており、これは交渉以前の問題だ。
態度と言動は俺様だが、目が表情が泣きながらすがりついてくる様で痛々しい。
「はいっ!! 宜しくお願い致します!!」
正座して、はっきり答えた陸を要が再度ベッドに押し倒す。真正面から密着すると要の下半身状況が陸にも伝わる。
「くっ…辛い」
「だから! いいって言ってるじゃないですか! 結婚するんですよね?」
「いいわけないだろ。生涯唯一の妻…今はまだ恋人だが。こんな行きずりみたいなのを許せるか!?
初めてなら、薔薇が散りばめられたスイートルームに決まっている」
ロマンチック過ぎて、最早笑える。笑い飛ばせる状況ではないのは流石の陸も理解している。だが、吹き出す一歩手前まできている。
「要さんって、見た目同様、思考もヨーロピアン風ですね…」
「辛いが、我慢する」
「……強固な意志ですね。まっじゃあ、本番以外はしましょ!」
「は?」
室内には甘い甘い雰囲気のみとなっていた。