オリオン座の恋人
オリオンは未だに道を走る車を厳つい目で見つめて、今にも追いそうになる。

「ちょっと、オリオン。あれは獲物じゃないわよ」

私はそんな彼に吹き出した。

「だが……狩りをしなくなって、もう何日が経つんだ? 血が騒いで仕方が……」

「だから! この世界では、普通は狩りなんて物騒なことをしなくても、ご飯を食べられるの!」

私は呆れつつも、オリオンに微笑んだ。

まぁ……これでも、車を追わなくなっただけマシなのかも知れない。
この世界に来て間もない頃なんて、車が通る度に、オリオンはそれを大型の動物と勘違いして追いかけ回して。私は一々、肝を冷やしていた。

それもだけれど……オリオンをこの世界に馴染ませるのには本当に苦労した。
まず、この世界では普通の人は服を着るものだと必死に説得し、服を着せて私の家に上げて……母も、おっかなびっくりだった。

だから今度は、「オリオンは私の彼氏で、命の恩人で、だけれども職と住む所を失って……」なんて作り話で母を必死に説得して、どうにかこうにか、父の部屋だったスペースに彼を住まわせることができた。
そしてオリオンの怪力を利用して、工事現場で働かせて。やっと彼も、仕事を覚えてきたところ……という感じだ。
< 100 / 101 >

この作品をシェア

pagetop