オリオン座の恋人
〜第三章 大きな背中〜
*
「だから……星奈は絶対にお星様になろうなんて思ってはいけないよ」
そう言って、お父さんは私の元からどんどんと遠ざかってゆく。
(嫌よ、お父さん……行かないで!)
私は叫ぶ……だけれども、その言葉は声にならない。
父のその大きな背中はゆっくり揺れながら前へ進み、徐々に小さくなってゆく。
(ダメよ、嫌……私を一人にしないでぇ!)
振り返りもせずに遠ざかるその後ろ姿を、私は追いかけて……だけれども、どれだけ追いかけても追いつくことは出来なくって。
私の目からは次から次へと、涙が頬を伝って落ちた。
*
はっと目を覚ますと、そこは薄暗くて……白い靄がかった洞窟の中だった。
「夢……」
私はぼんやりと呟いた。
そう……さっきまで見ていたのは夢。
その夢にうなされて、私の頬は伝った涙で濡れていた。
だけれども、今……自分がいるこの、信じられないような状況は現実。
目が覚めたのは、いつものベッドではなくって、冷たく固い洞窟のゴツゴツした岩の上。
自分にかけられている、毛布のようなそれは、その模様は……昨日、震えながら見た鹿の毛皮。
「夢じゃ……ないんだ」
自嘲ぎみに呟いて、私は思わず笑ってしまった。
「だから……星奈は絶対にお星様になろうなんて思ってはいけないよ」
そう言って、お父さんは私の元からどんどんと遠ざかってゆく。
(嫌よ、お父さん……行かないで!)
私は叫ぶ……だけれども、その言葉は声にならない。
父のその大きな背中はゆっくり揺れながら前へ進み、徐々に小さくなってゆく。
(ダメよ、嫌……私を一人にしないでぇ!)
振り返りもせずに遠ざかるその後ろ姿を、私は追いかけて……だけれども、どれだけ追いかけても追いつくことは出来なくって。
私の目からは次から次へと、涙が頬を伝って落ちた。
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はっと目を覚ますと、そこは薄暗くて……白い靄がかった洞窟の中だった。
「夢……」
私はぼんやりと呟いた。
そう……さっきまで見ていたのは夢。
その夢にうなされて、私の頬は伝った涙で濡れていた。
だけれども、今……自分がいるこの、信じられないような状況は現実。
目が覚めたのは、いつものベッドではなくって、冷たく固い洞窟のゴツゴツした岩の上。
自分にかけられている、毛布のようなそれは、その模様は……昨日、震えながら見た鹿の毛皮。
「夢じゃ……ないんだ」
自嘲ぎみに呟いて、私は思わず笑ってしまった。