オリオン座の恋人
でも、そうだとしたら、これから先……どうなるんだろう?

オリオン座の星座伝説には諸説ある。
一説には、ギリシャ神話一の狩人だったオリオンは、その力を自慢するようになった。その様子を見かねた神は、彼を懲らしめるためにサソリを放った。そしてオリオンは、そのサソリに刺されて命を落とした……。

その説を思い出して……私は思わず目を瞑って首を振った。
そんなの嫌だ! オリオンがそんな目に遭うなんて……命を落として私の前から消えるだなんて。

でも……
私は改めてオリオンを見た。
彫りの深いその顔は紛れもなく美青年で、筋肉が隆々としたその体は逞しくて。ギリシャ神話一の狩人……その肩書きも信じることができる。
だがしかし、オリオンはそんな肩書きをおごったり、自慢したりなんてしていない。狩人としての腕は確かかも知れないけれど、優しくて温かくて……私は知っている。彼は、狩りの後は必ず、自分が殺めた動物に黙祷を捧げているんだ。
そんな人が、女神の怒りを買うほどにおごり高ぶるなんて、私には思えなかった。

じゃあ……私はさらに思い出す。
私の覚えているもう一つの説では……

「セナ。何を百面相しているのだ?」
幼い頃のお話を思い出していた私に、オリオンの厳粛な声が向けられた。
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