オリオン座の恋人
「たわけ! お前、何を叫んで……」

オリオンがそう叫ぶやいなや、その鹿の母子は木々の間をすり抜けて、力の限り疾走した。

「こら! くそ……」

「ちょっと、待ってよぉ!」

オリオンは鹿を追って走り出して。私もそんな彼を追った。必死に走って追ったのだけれど……彼の速いこと、速いこと。

(あいつ……私を一緒に連れて行こうという気がないな)

息を切らしながら、そんなことを思った。

しかし、不思議なことに私はオリオンを見失うことはなく、辛うじてだけれど彼の足並みに付いてはいけて。
もしかしたら、私が迷子にならないように……少しは合わせてくれているのかも知れなかった。




結局、鹿の母子を見失って……森の中の広場に出ると、オリオンは鋭い眼光を私に向けた。

「お前……何のつもりだ! 狩りの邪魔をするのなら、付いて来るな!」

「だ……だって……」

ずっと全力で走っていた私は、汗でビショビショ、息も切れ切れで……
呼吸を整えるのに、暫しの時間を要した。

「あの鹿、親子だったじゃない!」

「それがどうした?」

「だから……お母さんを殺しちゃったら、あの子鹿、どうやって生きていくのよ!」

私は力の限り怒鳴って、オリオンを睨みつけた。
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