オリオン座の恋人
オリオンは初めて会った時のような、恐ろしい……刺すような眼光を瞳に灯して私を睨んだ。でも、私は負けなかった。
だって、このことだけは絶対に譲れない。お母さんがいなくなってしまった後の子鹿の気持ち、私は分かるんだもの。
そう……考えるだけで心が痛くて、苦しくって仕方がない。

だから私は絶対に目を離さずに、彼を睨み続けたんだ。


「……下らない。残された獣のことなど、考えるな」

オリオンは私から目を逸らし、呟くように言った。でも、私は食い下がる。

「違う。オリオン……あなたの考えていることは。獣も、私達と同じ感情を持っているの。あなたは……好き勝手に動物を殺しているわけじゃないことは私も知っている。殺した後には必ず黙祷を捧げていることも。でも……お願い。子から親を奪うことだけは、やめてあげて」

懇願する私の目からは熱い涙が溢れ出して、オリオンの厳つい顔が滲んで揺れた。でも……それでも私は彼を睨み続けた。

分かって欲しかった、私のこの想いを。オリオンにも……いや、オリオンだからこそ。
だって……厳しいけれど優しくて温かい彼は、何処か私のお父さんと重なるんだから。

私は体全体が熱くなって……オリオンの腕を掴んで、じっと彼の顔を見つめた。
彼は眉をひそめ、困惑したような表情を浮かべたけれど。
やがて、諦めたように大きな溜息を吐いた。
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