オリオン座の恋人
「……お前は強情だな。分かった。親子はもう、狩らぬ」

「本当?」

オリオンから目を離さず尋ねた。

「ああ。お前がそんなに必死で言うのに逆らって狩ったところで、肉が美味くも感じられんだろうからな」

「よかった……ありがとう」

「別に、礼を言うことでもないだろう」

照れ隠しなのか何なのか、オリオンは不貞腐れてそっぽを向いたけれど……
私は嬉しかった。真剣に話したことを彼が受け止めて、ちゃんと聞き入れてくれて。
だから、思わず私の顔が綻んだ。

「何を笑っているのだ?」

オリオンはまた、怪訝そうに私を見たけれど。

「ううん。何でもない」

私はそんな彼に、目を細めた。

「それはそうと、今日の飯はどうするのだ? 鹿を取り逃がしたし、獲物はないぞ」

「そ……そうね。今から頑張って、魚を釣る……とか?」

「なら、こうしている場合ではない。一刻も早く戻らないと、日が暮れるぞ」

気がつけばいつの間にやら、空は薄っすらと赤みがかっていて。本当に、急がなければ暗くなりそうだった。

「そうね。急いで戻りましょう」

二人して、来た道を戻る。私はどこを通ったかなんて全然覚えていなかったんだけど、オリオンは迷わずに突き進んで。私はただ、ひたすらに付いて行った。
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