オリオン座の恋人
すると彼女はさらに意外そうな顔をした。

「えっ、オリオン。あなたが、この娘を?」

「えっ……」

今度は私が驚いた。
彼女のその反応……まさか、二人は知り合い?

しかし、オリオンはブスッとしてそっぽを向いて。そんな彼と私を交互に見た彼女は、丸くなっていた目を細めた。

「セナ。オリオンは、あなたのことをいたく気に入っているみたいよ」

「えっ?」

状況をよく飲み込めずに首を傾げる私に、彼女はにっこりと微笑んだ。

「私は、アルテミス」

「アルテミス……」

「ええ。月の女神よ」

アルテミス……その名前も、幼い頃によく聞いていた。
アポロン神の妹で、月の女神……それと同時に狩猟の女神でもある。
オリオンは狩猟の女神アルテミスと一緒に狩りをするようになった。いつしかアルテミスはオリオンに惹かれるになり……それを聞いた兄のアポロンは止めるよう言ったが、彼女は従わなかった。
だから、アポロンは一計を講じて、アルテミスの放つ矢でオリオンを射殺すよう仕組んだ。
自らの手でオリオンを殺してしまったアルテミスはひどく嘆き悲しみ……父であるゼウス神に訴え、オリオンを空の星座にした。

これがギリシャ神話での、オリオンにまつわるもう一つの説。
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