オリオン座の恋人
その説を思い出した途端、私の顔からはサァっと血の気が引いた。
このアルテミスが、オリオンを射殺す女性……そんなの、嫌だ。
だってオリオンは、この世界で私を救ってくれた。それに、怖くて粗野で無骨だけれど……でも実は、優しくて温かくて。
彼がこのアルテミスの手にかかって殺される。そんなことを考えただけで、まるで身を引き裂かれるように辛かったんだ。


しかし、そんな私の心の内に構うことなく……顔に深く刻まれた皺を寄せて、オリオンはアルテミスに尋ねた。

「アルテミス。お前、今はこんな所に住んでいるのか?」

「ええ、そうよ。私はこの子達……鹿とかウサギとか、弱いけれど優しくて温かい動物達と一緒に暮らしているの」

にっこりと微笑むアルテミスを、オリオンは睨んで……深く溜息を吐いた。

「狩猟の女神が……そんなことでは、形無しだな」

「あら、狩猟の女神? そんなこと……言われていたこともあるけど。もう、狩りなんてやめたのよ。こんなに可愛い動物達を殺したくないし。あなたも知ってるでしょ?」

えっ……どういうこと?
狩猟の女神が狩りをやめた……動物を殺したくないから?
いや、それよりも何よりも……この二人って一体、どういう関係なのよ!?

オリオンとアルテミス……その二人の会話の内容に理解が追いつかず、私はひたすら混乱しながら聞いていた。
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