オリオン座の恋人
『グーーー……』

もう何度目だろう……オリオンのお腹から鳴るその音に、私は眉をひそめた。

「もう……オリオン。うるさい!」

そんな私に、彼は苛立った声を上げた。

「お前……誰の所為で! 明日は絶対に連れて行かんからな」

「いいもん。やっぱり私には、狩りなんて向かないから」

「……ったく」

そう言って彼は、ゴロンと寝返りをうった。

結局、その日の晩飯は蓄えていた燻製の肉と木の実の残りで乗り切った。私の腹はそれでも充分に満たされたんだけれど、オリオンはそうはいかなかったらしい。

腹が満たされない彼は、今日は不機嫌にさっさと寝床についたのだけれど……今、私の隣で寝ているのは、さながら腹をペコペコに空かせた狼だ。ずっとグーグーお腹を鳴らして、まるで取って食われそうで。でもそんな彼は何だか可笑しくて可愛くて、私の顔は自然と綻んだ。

でも、食われるといえば……
私はそっと、隣のオリオンを見た。

一緒に住んでいるのに、彼は私には一切、手を出さない。いや、それは私にとってはすごくありがたいんだけど……私に全く興味がないようにも思える。

昨日までは、私に……というか女性全般に興味がないんだと思っていたんだけれど、あのアルテミスとは恋人同士だったんだよな。
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