オリオン座の恋人
「オリオンは、あなたのことをいたく気に入ってるみたいよ」

彼女はそう、言っていた。
あれって、どういう意味だったんだろう?
オリオンが私を気に入ってる……少なくとも、私は彼の言動にそんな素振りを感じない。
でも、彼の元恋人でないと分からない何かがあるんだろうか?

そんなことを考えていたら、彼女……アルテミスのことが気になって。会って話をしたくなった。

彼女は帰り際、いつでもお話をしましょうって言ってくれた。じゃあ……今からでも。昨日のあの場所に行ったら会えるのかな?

私は思わず洞窟を出て、朧げな記憶を頼りにアルテミスに会った泉に向かった。



森の中を、昨日の帰り道を辿りながら歩いた。オリオンは全然迷わずに進んでいたけれど、私は茂みをガサゴソとする音や鳥の鳴き声なんかに一々、ビクッとなって。

「やっぱり……じっとしておくべきだったかなぁ」

森の中で一人、不安になった。

考えてみたら、昼間とはいえ武器も何も持ってきていなくって。狼か……猛獣なんかに襲われたら一たまりもない。

「引き返そっか……」

何をしているのか分からないけれど。取り敢えず、今来た道を帰ろうとした時だった。
私の体はビクッと強張った。

(何……?)

引き返す先の茂みがガサゴソと動いていて。

(何か、いる?)

正体の分からないそれに、私の顔からはさぁっと血の気が引いた。
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