オリオン座の恋人
「オリオン! オリオーン!」

アルテミスは探した。森の中を必死になって歩き回った。
オリオンに限って、何事もあるわけがないと信じていた。だけれども……嫌な胸騒ぎが治らなかった。

どのくらい探しただろう。夕陽も沈み、空が紺色に染まりかけていた頃だった。

「オリオン……?」

茂みの奥に茫然と立ち尽くす彼の姿に、アルテミスは目を疑った。それは彼の目の窪み。
いつでもその瞳に闘志の炎をメラメラと燃やしていたオリオンの目は二つともえぐられて無くなっていたのだ。

「どうしたの? どうしたのよ、オリオン!?」

アルテミスは思わずオリオンを抱きしめた。しかし、光を失ったオリオンはそれを危機と感じて振り払う。

「オリオン。私よ……アルテミスよ。オリオン……」

アルテミスはその両の瞳から、溢れんばかりの涙を流し続けたのだった。


光を失ったオリオンと共に、アルテミスは洞窟へと戻った。
しかし、オリオンはまるで廃人と化していて……そんな彼に光を取り戻させるため、アルテミスはアポロン神のもとを訪れた。
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