オリオン座の恋人


アルテミスの温もりの中で流すだけの涙を流して……気分の落ち着いた時には、空は夕焼けでオレンジ色に染まっていた。

「今日は……どうも、ありがとうございました。知りたかった、オリオンの過去を教えてくれて。それに、泣いてしまって。みっともない姿を見せてしまって、すみません」

「いいえ、いいのよ。そんなことより、あなた……」

アルテミスは、私の纏っている鹿の毛皮をじっと見て。思い立ったように、小屋の奥へと入って行った。

何だろう……そう思っていた私は、彼女の持って来たそれを見て、目を見張った。

「すごい。綺麗なドレス……」

シルク製だろうか。そのドレスは美しい青色で、元の世界でもこんなに綺麗なものは見たことがなくて。
そんなドレスがまさかこの世界で見れるとは思っていなくて、私は感動した。

「差し上げるわ」

「えっ、本当に?」

「ええ」

アルテミスは、長い睫毛の目をふわっと細めた。

「私の一番のお気に入りだったドレス。そう。あのオリオンが、すごく綺麗だと言ってくれた……」

彼女のその笑顔は何処か切なそうで。だけれども、オリオンの元で私がそれを着ることをとても喜んでいる。そんな表情をしていた。

だから……

「ありがとうございます」

私は遠慮なく、それを受け取って。アルテミスはそんな私に、切なくもとても幸せそうな笑顔を見せてくれたのだった。
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