オリオン座の恋人
「どうして……このサソリは、一体、誰が?」

サソリは私を狙っていたのであって、オリオンを狙ったのではない。そのことは分かっていたのだけれど……彼に少しずつ、死の影が迫ってきているような気がして。私の中ではそんな不安が渦巻いて……ひどく動転した。

「このサソリはこの辺りではよく見かけます……」

「ウソよ! 誰かが放ったんじゃないの!?」

ガイアを責めても仕方がない。それどころか、彼は私の恩人……頭では分かっていたのだけれど、私は昂ぶる感情を抑えることができなかった。
そして……ハッと、気が付いた。

「オリオンは!?」

「えっ、オリオン?」

「そうよ。私の恋人……彼も、サソリに狙われているわ!」

私は集めかけていた木の実を放り出して、駆け出した。

頭の中ではオリオンにまつわる星座伝説がぐるぐると回っていた。
オリオンは大きなサソリに刺されて殺された。そのため、彼は星座になった後もサソリを恐れて同じ空に出ることは決してない……。
幼い頃にぼんやりと聞いていたその伝説が、急遽、現実味を持って私の胸に押し寄せて。

「お願い……オリオン。無事でいて!」

彼の無事だけを祈って、私はひたすらに森の中を探し走ったのだ。
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