オリオン座の恋人
「何故、止める?」
腕を掴んで必死に懇願する私を彼はギロリと睨んだ。
その刺すような眼光は凄まじいほどの憤りと、そして……底知れぬ悲しみを含んでいるかに思えて、私の全身はブルッと震えた。
「こいつらは、お前を襲って殺そうとしたんだぞ。殺さなければ殺される……そうじゃないか?」
「でも、やりすぎよ。こいつらは確かに私を殺そうとしたけど……ほら、もうこんなに血だらけ。こんなに痛がって苦しんでる」
すると彼は、口元にフッと不敵な笑みを浮かべて右手の棍棒を下に下ろした。
「甘いな。そんなことじゃ、誰も守れない。そう……自分自身も」
「と……兎に角、ここを離れましょう」
私はゴワゴワとした毛むくじゃらで無骨な彼の左手を引き、血だらけの狼達の横たわるその場所を離れた。
*
木の蔓は行く手を阻むかのように四方八方から手を結び、掻き分けるのに苦労する。
暗くて色が分からないからだろうか……時折吹く風を受けて笑うように揺れる木の葉は黒く、深く、私をその奥にさらってゆきそう。
その森はまるで生きているかのように私達を取り込もうとして。
でも、私は必死でそれに抗い、どうにか深い森を抜けて見渡す限りの砂丘に辿り着いた。
(砂丘……?)
私はその風景に、著しく違和感を覚えた。
しかし、無言で自分の隣にいる男……そう。
狼達をなぎ倒した彼の違和感の方が、遥かに勝っていた。
「あなた……一体、何者なの?」
無精髭を生やして、全身毛むくじゃら。
毛皮の布一枚のみを纏って手にはあの禍々しい棍棒を持つ、異様な彼に恐る恐る尋ねた。
「お前こそ、何者だ? 一体、どこの国の者なんだ?」
低いトーンの荘厳な声が投げかけられた。
「ちょっと、私が先に聞いたんだから……」
キッと隣を向いて彼と目を合わせた途端……金縛りに遭ったかのように動けなくなった。
腕を掴んで必死に懇願する私を彼はギロリと睨んだ。
その刺すような眼光は凄まじいほどの憤りと、そして……底知れぬ悲しみを含んでいるかに思えて、私の全身はブルッと震えた。
「こいつらは、お前を襲って殺そうとしたんだぞ。殺さなければ殺される……そうじゃないか?」
「でも、やりすぎよ。こいつらは確かに私を殺そうとしたけど……ほら、もうこんなに血だらけ。こんなに痛がって苦しんでる」
すると彼は、口元にフッと不敵な笑みを浮かべて右手の棍棒を下に下ろした。
「甘いな。そんなことじゃ、誰も守れない。そう……自分自身も」
「と……兎に角、ここを離れましょう」
私はゴワゴワとした毛むくじゃらで無骨な彼の左手を引き、血だらけの狼達の横たわるその場所を離れた。
*
木の蔓は行く手を阻むかのように四方八方から手を結び、掻き分けるのに苦労する。
暗くて色が分からないからだろうか……時折吹く風を受けて笑うように揺れる木の葉は黒く、深く、私をその奥にさらってゆきそう。
その森はまるで生きているかのように私達を取り込もうとして。
でも、私は必死でそれに抗い、どうにか深い森を抜けて見渡す限りの砂丘に辿り着いた。
(砂丘……?)
私はその風景に、著しく違和感を覚えた。
しかし、無言で自分の隣にいる男……そう。
狼達をなぎ倒した彼の違和感の方が、遥かに勝っていた。
「あなた……一体、何者なの?」
無精髭を生やして、全身毛むくじゃら。
毛皮の布一枚のみを纏って手にはあの禍々しい棍棒を持つ、異様な彼に恐る恐る尋ねた。
「お前こそ、何者だ? 一体、どこの国の者なんだ?」
低いトーンの荘厳な声が投げかけられた。
「ちょっと、私が先に聞いたんだから……」
キッと隣を向いて彼と目を合わせた途端……金縛りに遭ったかのように動けなくなった。