オリオン座の恋人
すると、アルテミスは少し寂しそうに笑った。

「それは……まだ好きじゃない、と言えば嘘になるわ」

「やっぱり……」

「でもね。あなたには負ける」

「えっ?」

私が顔を上げると、彼女は切なげな……だけれども、満面の笑みを浮かべた。

「あなたが、自分の命を投げ出してでもオリオンを救いたい、と言った時ね。私、思ったの。ああ……この娘には敵わない。オリオンを想う気持ちでは……って」

「いえ、そんなこと……アルテミスだって。私と同じ立場になったらきっと、同じようにするわ」

私の言葉にアルテミスは寂しげに微笑んだ。

「ええ、そうね。でもね……きっと、そうするではダメなの。あなたは実際に、自らの危険を顧みずにオリオンを救った。だから……オリオンに対する想いでは、私は絶対にあなたを超えることはできない」

「そう……なのかな」

「ええ、そうよ」

アルテミスは私の手を両手でギュッと握った。

「それに、オリオンの想いも。きっと、もう……あなただけを見ているわ。オリオンを見てて、私には分かるの」

「うん……」

オリオンの私への態度……それは、いつでも、同じような感じで。少し変わったことと言えば、私と話す時、頬が薄っすらと桃色に染まるようになった。
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