オリオン座の恋人
海にずぶずぶと入ってゆき、オリオンの背丈くらいの深さになった。私の体はオリオンに支えられて、辛うじて頭を海面から出していた。

浜辺にいたアルテミスはすっかりと小さく見えたけれど……その横に、一人の男性が出現した。
逞しい体をした、金髪のその男は……きっと、アポロン神だ。

彼はアルテミスに何か話している。
声は聞こえないけれど分かる。
「アルテミス。弓の達人であるお前でも、あれを射ることはできまい」……そう、神話通りのことを話しているんだ。

そして、アルテミスはその挑発に乗って、こちらを狙って弓を引いて……

「オリオン! 今よ!」

私は彼と一緒に、思い切って透き通るような海に潜った。
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