恋愛なんて、するはずない。
「…雨ケ谷君!?」



私が倉庫から出て少し歩いた先に、雨ケ谷君がいた。



「どうして…ここに?」



「俺のセリフだ。



久莉栖に聞いたら花園らがお前を連れ出してそっからお前の姿、見てないって…



心配しただろーが、バカ。」



そう言って雨ケ谷君は私の頭をコツンとぶつ。



「ごめん、なさい。」



どうしよう、雨ケ谷君に会いたかったはずなのに、花園さんの言葉を思い出す。



別れるって…



言った方がいいのだろうか。



でも、日曜日デート…



その後?



今日は金曜日だ。



日曜日までは、いいよね…?



今言えるわけない。



息を切らしてまで、私を探しに来てくれた。



その優しさが嬉しくて…



「あざ…大丈夫か?他にも切れてるところとか…」



「え?」



私は今になって気づく、



そうだ、腕を見るとあちこち青紫色になっている。



顔だって…



そっと頬に手をやると指先に血がついた。



さっきまで出ていなかった…と思うけど。



「これくらいなんてことないよ。



水で洗っておけば」



すると雨ケ谷君が私の肩を掴む。



「雨ケ谷…君?」



すると、ペロッと頬を舐められた。



「ちょっ、えっ?!」



「__消毒。」



そう言って私から離れる。



なんて言えばいいのだろう。



ありがとう?でも舐められてありがとうは…



いや、でも消毒だし…



私が考え込んでいると雨ケ谷君はクスリと笑った。



「おまえ、ほんと面白いな。」



面白い?



私が?



つまらない人間じゃ、ないの?



「…何があったんだ?」



雨ケ谷君はいきなり真剣な顔になる。



「えっと…」



言えない。



「その、階段から派手に落ちてしまって…気絶してたみたい。」



あからさまな嘘。



雨ケ谷君にこれが嘘だと気付かれてしまうだろうか?



「おまえ、ドジかよ」



少し間を置いてケラケラと笑い出す。



「えへへ、ほんと何やってんだろーね、私。」



どうしよう、さっきの間…きっと分かってるよね…



嘘、ついてしまった。



「教室にもどろ。」



私は雨ケ谷君にそう言う。



「そうだな。」



嘘をついてしまったいう罪悪感で気まずい。



何を話せばいいのか。



そのまま話すことなく教室に戻ることになった。



「じゃあね。」



「あぁ」



私が教室に入ると花園さん達がギロリと睨んだ。



あぁ、見られてたな。



雨ケ谷君と戻ってきたとこ。



「御園さ〜〜〜んっっ!」



そう言って飛びついてきたのは久莉栖さんだ。



「心配したよ。授業無断欠席なんて…



何かあった?なんかひどい怪我だけど…」



そう言って久莉栖さんは視線を落とす。



「大丈夫、大したことじゃないから。



ちょっと階段から…落ちただけだから。」



「…そう?



花園さんたちに呼ばれてから、何かされたとかじゃい?」



一瞬ビクッと反応してしまったがなんとか堪える。



「…う、ん。」



花園さん達はこちらを見ている。



そんな状態で言えるわけない。



「それなら良かった。



昼休みだから、一緒にどう?



あっ、雨ケ谷君と食べる?」



「ううん、食べる!一緒に。」



久莉栖さんに、聞きたいことがあるのだ。



「やった、じゃあ食堂行こ!」



そう言って私と久莉栖さんは食堂に向かった。








私はサラダとご飯、味噌汁。



久莉栖さんはラーメンにカレー、唐揚げ、餃子、天ぷらだ。



すごい、ガッツリ…



「いただきまーす!」



「あの、久莉栖さん。」



「藍。



藍でいいよ。久莉栖さんなんて堅苦しいし。」



「えっと、じゃあ…藍さん?」



「さんもやめてよー、もう友達でしょ?」



友達…



「藍ちゃん…で。」



「うん、改めてよろしくね茜!」



あぁ、嬉しい。



こんなふうに呼び会える友達が今になって出来るなんて。



「あの、聞きたいことがあるんだけど」



私は一旦食べるのをやめ、口を開く。



「何?」



藍ちゃんもそれに合わせてくれたのか、箸を一旦置いた。
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