恋愛なんて、するはずない。
そっと目を開けると、目の前に雨ケ谷君の顔があった。



「…えっ?!」



私は気がついたら雨ケ谷君にお姫様抱っこされていたのだ。



「おまえ、危ないだろ。



片手で本持ちながらとか。」



「べ、別に、それくらい普通じゃない。



そ、それより早く下ろしなさいよね!!」



私は彼の腕の中でバタバタと暴れる。



「おいっ、暴れんなっっ!



それが助けてもらった人にとる態度かよ…」



「ゔっ…、あ、ありがとう…ございます。」



うぅっ、きっと私顔真っ赤だ…



こんなの、恥ずかしいよ。



いくら助けて貰ったとはいえ、お姫様抱っこだなんて…



「っていうか、雨ケ谷君、さっきまで寝てなかった??」



私は下ろしてもらい、身だしなみを整える。



「寝てたけど、ガタンって音したからな。


それに、直前に目が覚めた。」



何それ…よくわからない。



私は先程の本を置きに行く。



「あのさ、おまえなんで振ってんの?」



「え?」



「告白されても、なんで即答で振ってるかってこと。」



「それは…」



私は手を止める。



私が誰とも付き合わない理由。



「それは…怖いの。



恋愛が怖いの。」



こんなの馬鹿げた話だ。



恋愛が怖いなんておかしい、そんなの自分でもわかっている。



「恋愛恐怖症ってことか?



なにか"トラウマ"でもあんのか、おまえ?」



ドキリとする。



"トラウマ"。



それは、中学校時代の話だ。



「…私がまだ中学生の頃の話なんだけど。」



私は少しずつ雨ケ谷君に話し始める。






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